古典的なブレゲ数字のアップライトインデックスに、パテック フィリップとしては珍しいペンシル形の夜光針が採用された28ミリサイズのベビーカラトラバ。
■SS(28mm径)。手巻き(Cal.10-110、18石)。1943年製
オールド・パテックファンには探している人も多いといわれるほど、人気の高い針と文字盤の組み合わせのひとつだ。
しかも、ティファニーとのダブルネームというからさらにレア度は高い。
最近は状態の良いものがめっきり少なくなってきているといわれており、その意味では、当時のままの夜光針やドットマーカー、エッジのしっかり立ったベゼルなど、コンディション的に見ても希少な1本と言えるだろう。
『LowBEAT』No.2掲載(2012年10月発行)
当時のチェコスロバキア軍に制式採用された軍用時計は、ロンジン、エテルナ、レマニアの3社が製造を担っていた。
それらは、大振りなクッションケースに判読性の高いフルアラビアインデックス、ブラック文字盤といった共通した仕様をもち、主に航空部隊のパイロットに支給されていたようだ。
■SS(40mm径)。手巻き(Cal.15.94、15石)。1930年代製
ここで取り上げているのは、そんなチェコスロバキア軍の軍用時計によく似たロンジン製の個体だ。
いちばんの違いは、アラビアインデックスが内外に二つあり、外側部分を12時位置のリューズで回転させることで、時刻をメモリーできる機能が付加されている点だ。このモデルが軍用として採用されたのかは不明だが、ロンジンでは同様のモデルの小径版も製造していた記録が残っている。
搭載されているCal.15.94はロンジンが20世紀初頭に懐中時計用として開発したムーヴメントで、歯車がすべて独立した懐中時計の伝統的技法を取り入れている。
チラネジやブレゲヒゲを採用しており、仕上げは粒金メッキ+ナシ地(表面をざらつかせたベーシックな加工)。ナシ地仕上げのアンティークは状態が良いものでないと使い物にならないが、この個体は軍用であるにもかかわらず奇跡的に美しいコンディションをキープしている。
『LowBEAT』No.2掲載(2012年10月発行)
ロレックスには数多くの、いわゆる別注モデルが存在するが、このモデルはそれらの中でも極めて珍しい部類に入るだろう。
詳しい来歴はわからないが、カトリック協会においてローマ巡礼者に赦しを与える年と定めた“聖年”。1950年の聖年(Holy Year) を祈念し、限られた数のみ製造されたと思われる特別モデルだ。
■RGベゼル×SS(31mm径)。自動巻き(Cal.630、18石)。1950年製
それを示すかのように18金ローズゴールドのベゼルには“ROMA ANNO SANCT GENERALIS MAXI MIQUE JUBILEI MCML”と聖年を祈念する言葉がラテン語で刻まれている。ほとんど未使用品と思われるほど状態が良いというのも特筆すべき点と言えるだろう。
『LowBEAT』No.2掲載(2012年10月発行)
このクッションケースのノンオイスターモデルは、驚いたことに文字盤上に“ROLEX”という文字ではなく、代わりに“MITSUKOSHI”の名が表記されている。
なんとあの老舗百貨店、三越の名を冠するというレア中のレアモデルなのである。
■SV(27mmサイズ)。手巻き(Cal.11 1/2、15石)。1930年代製
いまでは考えられないが、かつてはロレックスより老舗宝飾店のほうがネームバリューがある時代があった。そのため宝飾店の名が入ったいわゆるショップウオッチが存在したのだが、その多くはロレックスと宝飾店名を併記したダブルネーム仕様だ。
それに対してこのモデルでは、文字盤上にロレックスの名はなく、その点でもかなり珍しい。
ブランド名を伏せてまで、なぜ三越の名前にしたのか、しかも、顧客に販売されたモノなのか、それとも三越が社用の贈答品として製作したものなのかということさえもわかっていない。
ただひとつ言えることは、日本腕時計史に残るショップウオッチの記念碑的作品ということだ。
『LowBEAT』No.1掲載(2012年4月発行)
1912年に発表されたモバードの傑作モデルのひとつ“ポリプラン”は、縦長ケースを手首のカーブに合わせるために、アーチ状に緩やかにカーブする美しいケースデザインが魅力。
■K14YG(20×43.5mmサイズ)。手巻き(Cal.不明)。1930年代製
しかも、ムーヴメントは、そのケースに合わせるために、三つに分割されており、なんとその両端の面は、中央の面に対し25度下側に傾けた構造をもつ。このような斬新な構造もこのモデルを傑作と言わしめるゆえんのひとつだ。
ここに紹介するモデルはトノータイプで、アール・ヌーボーの時代を彷彿とさせる優美さが目を引く。文字盤は書き直しだがケースなどのディテールやムーヴメントなども、この年代のものとしては程度良く保存されている。
『LowBEAT』No.1掲載(2012年4月発行)
■K14YG(24.5×31mmサイズ)。手巻き(Cal.10.86N、17石)。1926年製
ダメージも少なくいい感じのヴィンテージ感を醸すオリジナルダイアルの1926年製トノーモデル。懐中時計から受け継くヒンジタイプの構造をもつケースも魅力的なポイントである。
最大の特徴は、“グリーンゴールド”と呼ばれる金無垢ケースにある。シルバーの比率が多いために、薄くグリーンがかったように見えることから呼ばれるものでレア度はかなり高い。ムーヴメントのCal.10.86Nは、10型サイズでメイランやアガシなどにも見られる当時の主流サイズで、小振りでありながらもクオリティの高さを十分感じる。
ムーヴメントの状態も良好で、バイメタルテンプやブレゲヘアースプリングのコンディションも良好な1本。
『LowBEAT』No.1掲載(2012年4月発行)